2012年4月3日火曜日

Q12-Q29


 
Q12. 遺伝子組換え技術を利用した食品にはどのようなものがあるのですか。
 1994年に米国カルジーン社が遺伝子組換え技術を利用し、「フレーバー・セーバー」 という名の日持ちがよい(熟して柔らかくなるのを遅くした)トマトを初めて商品化しました。また、ゼネカ社のペクチンを多く含むトマトを利用したトマトピューレも英国で販売されました。
 日本では、遺伝子組換え農作物は生鮮食品として利用されていませんが、除草剤耐性大豆やナタネおよび害虫抵抗性のジャガイモ、トウモロコシ、ワタ等は、大体、次のような加工品に利用されています。
除草剤耐性大豆 食用油、豆腐、豆乳、醤油、マーガリン、マヨネーズ、サラダ・ドレッシング、ショートニング、グリセリン、乳化剤、乳製品、大豆タンパク質、タンパク強化剤、アミノ酸、調味料、水産練製品、ソーセージ、麺類、パン類、菓子類等
害虫抵抗性ナタネ 食用油、マーガリン、マヨネーズ、サラダ・ドレッシング、ショートニング等
害虫抵抗性ジャガイモ フライドポテト、ポテトチップス等
害虫抵抗性トウモロコシ 食用油、マーガリン、てんぷら粉、シリアル製品、コーンスターチ(酒類、水産練製品)、水飴、ブドウ糖(菓子類、佃煮、ジャム、酒類、飲料、パン類、缶詰、ソルビット)、異性化糖(飲料、パン類、冷菓、缶詰)
害虫抵抗性ワタ 食用油
(ここでは、厚生省の安全性審査が終了した遺伝子組換え食品について説明しました。)

参考資料:
農林水産省先端産業技術研究課資料 商品大辞典
図説 日本の食品工業
原色 食品加工工程図鑑
大豆の一生(アメリカ大豆協会発行)
遺伝子組換え食品Q&A (日本国際生命科学協会)


Q13. バイオテクノロジーを使って作られた食品と遺伝子組換え食品とはどう違うのですか。

遺伝子組換え技術を用いた「遺伝子組換え食品」は、バイオテクノロジーを使って作られた食品の一部です。
 「バイオテクノロジー食品」としては、例えば、現在、スーパーやコンビニエンス ストアに並ぶ「焼き立てパン」が挙げられます。パン酵母は冷凍すると活性が落ちるため、今までパン生地の冷凍はできませんでした。しかし、パン酵母の「細胞融合」により「冷凍しても性能の落ちないパン酵母」が誕生し、その結果、いつでも冷凍生地を焼いて焼き立てのパンを販売できるようになりました。
 また、家庭で使う「和風だし」もバイオテクノロジーの産物です。日本の三大味、 昆布・鰹節・椎茸のそれぞれのうまみの本体は、グルタミン酸ナトリウムやイノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウムで、これらは現在微生物の代謝を利用して作られています。

参考資料:
ご存じですか?遺伝子組換えによる「バイオ食品」
(日本生活協同組合連合会)


Q14. 遺伝子組換え食品はいつごろから出回っているのでしょうか。
 アメリカで、1994年に米国カルジーン社が「フレーバー・セーバー」と呼ばれる 日持ちのよい遺伝子組換えトマトを初めて商品化しました。また、1995年にはゼ ネカ社のペクチンを多く含むトマトを利用したトマトピューレも英国で販売されま した。
 日本では、1996年に厚生省で、初めて遺伝子組換え食品の安全性審査が行われ、それ以来、およそ30種類の遺伝子組換え農作物が食品安全性の審査を終了しています(Q18)。
 現時点では、遺伝子組換え農作物の生鮮食品としての利用はなく、国内で栽培されているものもありませんが、アメリカなどの海外から輸入している遺伝子組換え大豆、ナタネ、ジャガイモ、トウモロコシ、ワタなどが、加工食品として利用されていると思われます。

Q15. 実質的同等性とは何ですか。
 「実質的同等性」あるいは「同等とみなし得る」とは、食品としての安全性を審査するために、既存の食品を比較対象として用いるという方法が適用できるということです。
 そもそも、ある食品が100 %安全であると科学的に証明することはできません。したがって、食品としての安全性を審査するためには、(1)まず、比較対象として充分な食経験がある既存の食品を選び出し、(2)それと比較した上で、安全かどうかを判断する、 という2つの段階が必要になります。実質的同等性は、この(1)の比較対象を定める時に用いられる考え方です。
 「同等とみなし得る」かどうかの判断は、1)遺伝的素材に関する事項、2)広範囲なヒトの安全な食経験に関する資料、3)食品の構成成分等に関する資料、4)既存種と新品種の使用方法の相違に関する資料の各要素について検討し、当該食品植物と既存のものが全体として食品としての同等性を失っていないと客観的に判断できるかどうかにより行います。
 なお、厚生省が行う安全性審査の確認の範囲は、既存のものと同等とみなし得る組換え体としています。その理由は、そのような組換え体において付加された性質以外の性質については、すでにその安全性が広く受け入れられてきたため、あらためて考慮する必� ��がないか、又は、その安全性の審査を行う上で必要とされる知見等の蓄積が十分になされていると考えられるためです。
 遺伝子組換え食品の安全性評価の考え方は、国際的には、世界保健機関(WHO) 「バイオテクノロジー応用食品の安全性評価のための戦略」や経済協力開発機構(OECD) 「バイオテクノロジー応用食品の安全性評価:概念と原則」においてとりまとめられており、 わが国をはじめ、世界各国の安全性評価基準にも活かされています。

参考資料:
遺伝子組換え食品Q&A (厚生省生活衛生局)


ドイツの鉛クリスタルの価値はいくらですか

Q16. 成分組成が変わっている遺伝子組換え食品の場合は、実質的同等性の考え方があてはまらないのではないですか。
 成分組成が変わっている遺伝子組換え食品の場合でも、既存の食品を比較対 象として用いることができる場合(実質的同等である場合)には、厚生省の食品の安全性評価指針に沿って安全性を審査することができます。(審査の内容については、Q17参照)
 高オレイン酸大豆の例を考えてみると、この大豆は「熱安定性が高く健康に良い 脂肪酸組成を持つ大豆油を作る」ことを目標に、遺伝子組換え技術を使って品種改良されています。構成成分を分析した結果、タンパク質や炭水化物、総脂質量、 脂肪酸の各構成成分、灰分、ビタミン、抗栄養素などの成分は従来の大豆と同等ですが、脂肪酸組成の分析の結果、目標とした変化が得られたことが確認されま した。高オレイン酸大豆油には、オレイン酸が80%以上含まれていて、従来の大 豆油中の17-30%に比べて大幅に増加しています。しかし、変化したのは各脂肪酸の組成比だけで、脂肪酸の構成成分自体は組換え前の大豆と同じで、私たちの食生活にとって新規の脂肪酸は含まれていないことが調べられています。このように、高オレイン酸大豆油の脂肪酸組成は従来の大豆油とは違っていて、その 結果、健康に良いとされるオレイン酸を多く含み熱安定性の高い脂肪酸組成を持つ大豆油が誕生したわけです。高オレイン酸大豆油は、従来の大豆油とは違う特性を持つ油ですが、一方で、安全な食経験のあるオリーブオイルや、既に市場に出回っている高オレイン酸サンフラワー油や高オレイン酸カノーラと類似した脂肪酸組成を持っています。

参考資料:
遺伝子組換え食品Q&A(厚生省生活衛生局)
遺伝子組換え食品Q&A(国際生命科学協会)


Q17. 遺伝子組換え技術によって作られた農作物の食品としての安全性はどのように確認されているのですか。海外から輸入される農作物の安全性についても同様に確認 されているのでしょうか。
 厚生省の「組換えDNA 技術応用食品・食品添加物の安全性評価指針」に基づき安全性が審査されます。海外から輸入される農作物を食品として利用する場合も、この指針にしたがって審査が行われます。安全性の確認は、主に
  • 組換えDNA 技術によって生産物に付加されることが期待される性質
  • 組換えDNA 技術に起因し発生するその他の影響
について行われます。
 具体的には、
  • 挿入遺伝子の安全性
  • 挿入遺伝子により産生される蛋白質の有害性の有無
  • アレルギー誘発性の有無
  • 挿入遺伝子が間接的に作用し、他の有害物質を産生する可能性の有無
  • 遺伝子を挿入したことにより成分に重大な変化を起こす可能性の有無
等を確認しています。
 例えば、人工胃液・腸液による消化の程度、加熱処理に対する感受性、予想される摂取量 などのデータに基づき、アレルギー誘発性、毒性影響、代謝経路への影響などを調べます。さ らに、これまで我々が食べてきたその農作物の栄養素・有害物質等の量的変化が起きていな いかなどについて分析します。その結果は申請資料として厚生省に提出され、食品衛生調査 会バイオテクノロジー特別部会で慎重に審査され、必要に応じて追加資料の提出が求められることもあります。
 このようにして、開発者が行なった安全性評価が適切でありこれまでの食品と同じように加工利用し、または摂取してもこれまでの食品と同じように安全であると確認された農作物が、 国内において販売されることになります。

参考資料 :
遺伝子組換え食品Q&A(厚生省生活衛生局)


Q18. 今までに厚生省による安全性審査が終了した遺伝子組換え食品にはどんなものがあるのですか。
 組換えDNA 技術を応用した食品は、農作物と組換え体そのものを食べない食品添加物のようなものに分けられます。
 現在までに厚生省による安全性審査が終了したものは、トウモロコシ、ナタネ、ジャガイモなどの農作物29品種とキモシン、α-アミラーゼ等の食品添加物6品目があります。その一覧は次の通りです。

これまでに安全性審査が終了した遺伝子組換え食品一覧:

1.食品


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品種 性質 申請者 安全性確認日
大豆 除草剤耐性
(グリホサート)
日本モンサント(株) H 8.9.3
なたね 除草剤耐性
(グリホサート)
日本モンサント(株) H 8.9.3
じゃがいも 害虫抵抗性
(コロラドハムシ等)
日本モンサント(株) H 8.9.3
とうもろこし 害虫抵抗性
(アワノメイガ等)
日本モンサント(株) H 8.9.3
なたね 除草剤耐性
(グルホシネート)
ヘキスト・シェーリング・アグレボ(株) H 8.9.3
なたね 除草剤耐性
(グルホシネート)
ヘキスト・シェーリング・アグレボ(株) H 8.9.3
とうもろこし 害虫抵抗性
(アワノメイガ等)
日本チバガイギー(株) H 9.5.26
とうもろこし 害虫抵抗性
(アワノメイガ等)
日本モンサント(株) H 9.5.26
じゃがいも 害虫抵抗性
(コロラドハムシ等)
日本モンサント(株) H 9.5.26
わた 害虫抵抗性
(オオタバコガ)
日本モンサント(株) H 9.5.26
とうもろこし 除草剤耐性
(グルホシネート)
ヘキスト・シェーリング・アグレボ(株) H 9.5.26
なたね 除草剤耐性
(グルホシネート)
ヘキスト・シェーリング・アグレボ(株) H 9.5.26
なたね 除草剤耐性
(グルホシネート)
ヘキスト・シェーリング・アグレボ(株) H 9.5.26
なたね 除草剤耐性
(グルホシネート)
ヘキスト・シェーリング・アグレボ(株) H 9.5.26
なたね 除草剤耐性
(グルホシネート)
ヘキスト・シェーリング・アグレボ(株) H 9.5.26
わた 除草剤耐性
(グリホサート)
日本モンサント(株) H 9.12.16
わた 除草剤耐性
(プロモキシニル)
日本モンサント(株) H 9.12.16
なたね 除草剤耐性
(グルホシネート)
ヘキスト・シェーリング・アグレボ(株) H 9.12.16
なたね 除草剤耐性
(グルホシネート)
ヘキスト・シェーリング・アグレボ(株) H 9.12.16
トマト 日持ち性の向上 麒麟麦酒(株) H 9.12.16
なたね 除草剤耐性
(グルホシネート)、
雄性不稔性
ヘキスト・シェーリング・アグレボ(株) H 10.12.14
なたね 除草剤耐性
(グルホシネート)、
稔性回復性
ヘキスト・シェーリング・アグレボ(株) H 10.12.14
なたね 除草剤耐性
(オキシニル系)
ローヌ・プーラン油化アグロ(株) H 11.11.29
わた 害虫抵抗性
(オオタバコガ等)、
除草剤耐性
(ブロモキシニル)
日本モンサント(株) H 11.11.29
てんさい 除草剤耐性
(グルホシネート)
アグレボ・ジャパン(株) H 11.11.29
とうもろこし 除草剤耐性
(グルホシネート)
日本モンサント(株) H 11.11.29
とうもろこし 害虫抵抗性
(アワノメイガ等)、
除草剤耐性
(グルホシネート)
日本モンサント(株) H 11.11.29
とうもろこし 除草剤耐性
(グリホサート)
日本モンサント(株) H 11.11.29
なたね 除草剤耐性
(グルホシネート)
アグレボ・ジャパン(株) H 11.11.29

2.食品添加物
品目 申請者 安全性
確認日
開発者
キモシン ファイザー(株) H 6.9.5 ファイザー・インク
(米国)
キモシン (株)ロビン H 6.9.5 ギストーブロカーデス
(オランダ)
キモシン (株)野澤組 H 8.9.3 クリスチャンハンセン
社(デンマーク)
α-アミラーゼ ノボルディスクバイオインダストリー(株) H 9.5.26 ノボルディスク
A/S (デンマーク)
リボフラビン 日本ロシュ(株) H9.12.16 F.Hoffmann- La Roche (sスイス)
α-アミラーゼ ノボルディスクバイオインダストリー(株) H10.12.14 ノボルディスクA/S (デンマーク)

参考資料:遺伝子組換え食品Q&A (厚生省生活衛生局)

Q19. 安全性評価では、哺乳類の細胞や実 験動物を用いて慢性毒性や遺伝毒性 などの検査が行われているのですか。
 厚生省の食品の安全性評価指針においては、組換えDNA 技術を応用して生産された食品 (遺伝子組換え食品)の安全性審査では、一律に毒性試験が不要であるという扱いになっているものではなく、慢性毒性試験等は必要に応じて実施されるべきであるとされています。
 食品の安全性評価指針の別表3 においては、必要に応じて一連の毒性試験(急性毒性に関する試験、亜急性毒性に関する試験、慢性毒性に関する試験、生殖に及ぼす影響に関する試験、変異原性に関する試験、がん原性に関する試験、およびその他必要な試験(腸管毒性試 験等))のデータを求めています。科学的に必要がないと判断されれば省略することができるとされています。
 実際、これまでに安全性審査の終了した29品種の遺伝子組換え食品は、急性毒性に関する試験を実施しているものもありますが、慢性毒性等に関する試験は実施する必要がないと個別に判断されたものです。
 その理由は、安全性審査においては、まず提出された資料により既知のアレルギー物質、 有害物質等ヒトの健康に影響を及ぼすような新たな物質が産生されていないことを確認しています。組換えDNA 技術を利用することで付加される物質について、明確な安全性を示す根拠がない場合には、必要に応じて急性毒性試験等の毒性学的試験が必要とされています。付加される物質が、ヒト体内や既存の食品中に元来存在するもの(内在性物質)、速やかに分解・代謝され内在性物質に変化するものである場合等には、急性毒性試験の結果から、もと の物質の安全性について評価することが可能です。
(用語)
1.慢性毒性試験 一定量の化学物質を長期間摂取することにより身体に影響があるかを調べる試験。生まれた段階から餌や飲料水の中に化学物質 を混ぜて食べさせた実験動物(ネズミ等)と、化学物質を与えない実験動物との寿命・発育状況・運動能力等を比較する方法。
2.
誰が世界貿易センターを破壊?
遺伝毒性試験
一定量の化学物質を長期間摂取したことにより子孫にどのような影響があるかを調べる試験。一定期間、餌や飲料水の中に化学物 質を混ぜて食べさせた実験動物の子供や孫と、化学物質を与えない実験動物の子供や孫との生殖能力・寿命・発育状況・運動能 力等を比較する方法。

参考資料:
遺伝子組換え食品Q&A(厚生省生活衛生局)

Q20. 遺伝子組換え食品がアレルギーを引き起こすことはありませんか。
アレルギーを引き起こすかどうかについては、厚生省の食品の安全性評価指針に基づき、組換えられた遺伝子の作り出すもの(遺伝子産物)のアレルギー誘発性に関する資料が提出されています。具体的には以下の6項目を総合的に判断して、安全性が確認されています。
  1. 供与体の生物の食経験に関する事項
    導入遺伝子のもととなる生物の病原性、毒素産生性、アレルギー誘発性などについてのデータ
  2. 遺伝子産物がアレルゲン(アレルギーを引き起こす原因となるもの)として知られているかに関る事項
    導入遺伝子の遺伝子産物のアレルギー誘発性に関するデータ
  3. 遺伝子産物の物理化学処理に対する感受性に関する事項
    導入遺伝子により作られたタンパク質が人工胃液・人工腸液、加熱処理でどのように分解されるかについてのデータ
  4. 遺伝子産物の摂取量を有意に変えるかに関する事項
    遺伝子産物の摂取量が有意に変わることがないかどうかについてのデータ
  5. 遺伝子産物と既知の食物アレルゲンとの構造相同性に関する事項
    既知のアレルゲンと遺伝子産物とのアミノ酸の並び方を比較し、似た構造がないことを確認したデータ
  6. 遺伝子産物が一日タンパク摂取量の有意な量を占めるかに関する事項
    一日の食事の中で、遺伝子産物であるタンパク質が著しく多量に摂取されないことを確認したデータ
 なお、1〜6により安全性が確認されない場合は、さらに追加の試験を行うこととされています。これまでに審査が終了した遺伝子組換え食品は、これらの資料について、食品衛生調査会で個別に 十分検討を行い、提出された資料が適切なものであると判断されたものです。

  また、ある企業が、大豆の栄養価を高めるために、ブラジルナッツのDNA を入れてみたところ、アレルギーを引き起こすことが分かり、開発が中止されたという事例があります。
 この事例はしばしば誤解され、遺伝子組換えでアレルギーが起こったと思われていることがあるよう ですが、ブラジルナッツが一部の人にアレルギーを起こすことは、既にわかっており、はじめから十分予想できたことです。これをきちんと確認し、商品化をとりやめたという点において、安全性評価システムが有効に働いたことを示しています。

参考資料:
遺伝子組換え食品Q&A(厚生省生活衛生局)


Q21. 遺伝子組換え食品がガンを引き起こしたり、胎児に影響を与えたりすることはありませんか。
 遺伝子組換え食品については、これまで、厚生省の「組換えDNA 技術応用食品・食品添加 物の安全性評価指針」に基づき、挿入した遺伝子により作られるタンパク質の有害性の有無や、アレルギー誘発性の有無だけでなく、挿入した遺伝子が間接的に作用して、他の有害物質を 作る可能性の有無などを含め、詳細な項目を設けて、食品衛生調査会の専門家の意見を聴きながら個別に安全性審査を行っています。
 現在の指針においても、これらの審査項目による審査では安全性が十分に確認できないと判断された場合には、ガン原性に関する試験等の安全性に関するデータを提出させることと しています。

(注)安全性が十分に確認できないと判断された場合に必要な試験


  • 急性毒性に関する試験 ・亜急性毒性に関する試験
  • 慢性毒性に関する試験
  • 生殖に及ぼす影響に関する試験
  • 変異原性に関する試験 ・ガン原性に関する試験
  • その他必要な試験(腸管毒性試験等)
 これまで29品種の作物と6品目の添加物について安全性審査が行われてきた範囲では、ガン原性試験が必要と判断された例はありません。

Q22. 遺伝子組換え食品と普通の食品と は栄養成分に違いがあるのですか。
 現在、実用化されている遺伝子組換え農作物の多くは、特定の除草剤耐性や特定の害虫耐性といった、栽培する上で好都合であるような性質が付与されているに過ぎません。
 これは遺伝子の上ではわずかな部分なので、基本的に普通の食品と栄養成分に違いが生じることはありません。
 ただし、もともと、栄養成分を変える目的で遺伝子組換えを行っている場合もあります。例えば、オレイン酸は悪玉コレステロールを減少させるため健康に良いと言われていますが、このオレイン酸を多く含む高オレイン酸大豆は米国で商品化されています。また、国内で実用可能な植物には、アレルギーの原因物質の含有量が少ない低アレルゲン米や高ペクチン含有トマト、酒造用低タンパク質米などがあります。

Q23. 遺伝子組換えに大腸菌由来の遺伝子を用いると聞きましたが、O157(オー157)のような病原性はないのですか。
 これまでに安全性審査が終了した遺伝子組換え食品の開発において使用された大腸菌は、長い間研究に用いられ、安全性が確立されたものであり、ヒトに対する問題はありません。
 大腸菌は、抗体によって認識される細胞表面の抗原性の違い、具体的には細胞表面の多糖(糖が複数つながってできている物質)や、鞭毛(大腸菌が動くために用いる細長いむち状の小器官)などを作るタンパク質の構造の違いを目印にして分類されます。最近話題になることの多い腸管出血性大腸菌O157、あるいはO157:H7株の名前の由来は、O (オー)抗原(表面多糖)の うち、命名上157番目の型を持ち、またH抗原(鞭毛タンパク質)のうち7番目の型を持つような株 (種類)であることを意味します。
 しかし、O157という多糖やH7というタンパク質そのものが毒性を持つわけではありません。腸管出 血を引き起こすのは、ベロ毒素(志賀様毒素)と呼ばれ、O157株の多くがこの毒素を作りますが、毒素 を作らないO157株もいます。O157:H7という細胞表面の性質と、毒素を作る性質が、見かけ上強く相 関しているのは確かですが、両者が生理的にどう関係しているのか(いないのか)は現在のところ明確 でありません。
 皆さんのおなかにはたくさんの種類と数の腸内細菌がすんでいますが、大腸菌もその一つです。
 腸内では少数派ですが、実験室条件では生育速度が速く培養も簡単なので、分類を含め詳しく研究されてきました。大多数の大腸菌は無害で、毒素を作るような有害な種類は大腸菌のうちの一部です。たとえば海水浴場の水にどれくらいの大腸菌が見つかったかという検査も、その大腸菌そのものが有害というよりも、大腸菌の検出法が確立しているので、汚水あるいは身体由来の汚物の存在を推定するよい指標として使われているわけです。
 さて、組換えDNA実験では最終的に目的の生物に遺伝子を導入するまでに、まず遺伝子を単離 し、増やし、解析し、あるいは改造するようなたくさんの操作が含まれます。それぞれのステップで、ベクター(目的の遺伝子を細胞に組み込むための運び役として使われるDNA)も主要部分は大腸菌由来のDNAであり、遺伝子を導入する宿主にも大腸菌が多用されます。組換えDNA実験、あるいは遺伝子組換え食品の開発段階でも宿主として使われる大腸菌はK12株と呼ばれますが、このK12も、 O抗原とは異なるK抗原という多糖の12番目の構造を持つ種類という意味です。 大腸菌K12株は半世紀以上に亘ってもっとも詳しく研究されてきた生物で、安全性が確立されており、ヒトに対する問題はありません。さらにゲノム解読も完了して、毒素遺伝子をもたないことが改めて確認されています。

Q24. 遺伝子組換え農作物には抗生物質耐性遺伝子が入っているものがあると聞きま したが、人体に影響はないのですか。
遺伝子組換え農作物を作成する際、目的の遺伝子が組み込まれたかどうかを判断するために、抗生物質耐性マーカー遺伝子を組み込む場合があります。そのような場合には、次の(1)及び(2)の各項目について、組換え体内における変化等に関 して行われた考察も含め、総合的に判断して、抗生物質耐性マーカー遺伝子の安全性に問題がないことを確認しています。
(1)遺伝子及び遺伝子産物の特性に関する事項
1.構造及び機能: 遺伝子については塩基配列、タンパク質については機能とその性質が明らかであること。 また、挿入した抗生物質耐性マーカー遺伝子以外に有害塩基配列を含まないことなど。
2.耐性発現のメカニズム、
 使用方法及び関連代謝産物:
抗生物質の使用方法(経口、静脈注射等)が明らかであること。 耐性発現のメカニズムが明らかであること。耐性発現に関連する代謝物質が安全性に問題のないものであること。
3.同定及び定量方法: 遺伝子産物の同定及び定量方法が明らかであること。
4.調理又は加工による変化: 熱等の物理的処理に対する感受性があること (酵素活性を失っていること等が明らかにされていること)。
5.消化管内環境における変化: 人工胃液・腸液に対する安定性の試験により、安定性がないことが明らかであること。 安定性がある場合においては、安全性に問題がないことを示す合理的な理由があること。
6.アレルギー誘発性: アレルギー誘発性に関する知見が明らかであること。

(2)遺伝子及び遺伝子産物の摂取に関する事項
1.予想摂取量: 発現量から予想される当該タンパク質の摂取量を推定すること。
2.耐性の対象となる抗生物質の使用状況: 耐性の対象となる抗生物質の使用状況(使用方法、使用量、使用目的等)が 明らかであること。
3.通常存在する抗生物質耐性菌との比較: 挿入した抗生物質耐性マーカー遺伝子と同じ遺伝子をもつ耐性菌が環境中に 存在しているかどうかについて明らかであること。
4.経口投与した抗生物質に対して与える影響とそれに伴って問題が生ずる可能性: 抗生物質耐性マーカー遺伝子の発現タンパク質(抗生物質代謝酵素)の摂取量ならびに調理過程及び消化管内にお ける分解量、抗生物質の使用状況等から検討した抗生物質の不活化に伴う問題がないことが推察されていること。
 この抗生物質耐性遺伝子が、腸内細菌に移行することにより、腸内細菌が抗生物質耐性を獲得するのではないかとの心配については、これまでに植物から微生物へ遺伝子が移行するといった報告はないこと、植物中の抗生物質耐性遺伝子は消化管において短時間で分解されること、用いられている抗生物質は現在ヒトの臨床には用いられていないことなど から、このような心配はないと考えられます。

参考資料:
遺伝子組換え食品Q&A(厚生省生活衛生局)
組換え農作物早わかりQ&A(農林水産省農林水産技術会議事務局)
遺伝子組換え食品Q&A(日本国際生命科学協会)



Q25. 害虫抵抗性の遺伝子組換え食品には、害虫 を殺すタンパク質が入っていると聞きましたが、人が食べても問題はないのですか。
 食品安全性の審査が終了しているので、食べても大丈夫です。
 土や植物表面にいる、ある細菌を、ある種の昆虫が食べると死ぬ現象が古くから知られていました。細菌のタンパク質が虫の腸に障害を起こすためで、米国ではこの細菌そのものを生物農薬として70年以上もトウモロコシの害虫防除に使ってきました。このタンパク質の遺伝子を植物自体に組み込んだのが虫のつかない作物で、もともと限られた昆虫にしか作用せず、またヒトが食べても消化されるので影響はありません。これらの食品は、厚生省の「組換えDNA技術応用食品・食品添加物の安全性評価指針」に基づき安全性が審査されています。

  さらに詳しく説明すると、この質問の殺虫タンパク質はBt毒素と呼ばれているもので、土壌中に生息する、ガやコガネムシの天敵微生物であるバチルス菌(学名Bacillus thuringiensis )が作るもので、化学的な殺虫剤とは性質と原理が異なります。Bt という名前はバチルス菌の学名の頭文字をとったものです。 このタンパク質は特定の昆虫の消化管(中腸)上皮を破壊します。すると、昆虫は消化管の 機能が失われて、死んでしまいます。Bt毒素は、ヒトが食べた場合には、十分に消化されてしまいます。もし、十分消化されなかったとしてもBt毒素が付着するための場所(=受容体)は、特定の昆虫の腸管にしか存在せず、この受容体を持っていないヒトやその他の生物には影響 がありません。また、このタンパク質自体は加熱により分解されるほか、胃液やすい液により分解されることから、安全性には問題はないものと考えられます。

  また、実際に害虫に強いジャガイモが米国、カナダ、欧州等で安全性が確認され、食卓に上っていますが、いずれの遺伝子組換え農作物も健康に対する影響は報告されていません。

(参考)
害虫の成育を阻害する物質は微生物だけが作るものではなく、トウモロコシの中にもアワノメイガの幼虫の発育を阻害する物質 を作るものがあります。これはトウモロコシが害虫に対する防御機構として進化させてきた性質です。Bt 毒素を用いる方法はこのような自然界にもともと備わった害虫への防御機構を利用した方法なのです。

参考資料:
遺伝子組換え食品Q&A (厚生省生活衛生局)
遺伝子組換え食品Q&A (国際生命科学協会)



Q26. 家畜が遺伝子組換え飼料を食べ、その肉を人間が食べたとき、どのような影響があるのですか。
 安全性評価の基本は食品でも飼料でも同じです。例えばウシの飼料の場合、ウシが食べて大丈夫かどうかを調べます。この時の考え方は食品の安全性審査の考え方と同じです。
 遺伝子組換え飼料は、上の考え方にしたがって、農林水産省が飼料としての栄 養成分の比較、及び導入タンパク質の安全性の確認を行ったもののみ商品化されています。したがって、家畜が遺伝子組換え飼料を食べることにより影響が生じることはありません。
 また、家畜が食べた遺伝子組換え飼料は、家畜の体内で消化されてしまうため、遺伝子組換え飼料の遺伝子がその肉に含まれていることも考えられません(消化 のしくみについてはQ27)。したがって、安全性が確認された遺伝子組換え飼料を食べた家畜の肉を人間が食べても問題はありません。

Q27. 遺伝子組換え食品を食べるとその遺伝子や遺伝子産物であるタンパク質が体内で働くことはないのですか。
 作物中の遺伝子は、体内の消化酵素で分解されるので、その遺伝子が体内で働 くということはありません。例えば、人間は、一万年以上、遺伝子が何十億も入った様々な生の食品を食べてきましたが、食品の中に入っていた遺伝子によって人間が変わったことはありません。それは、人類の歴史が証明しています。
 一方、食品中のタンパク質はまず胃の中の強い酸性条件によって、構造が壊れます(これは変性と呼ばれます)。変性したタンパク質はペプシンと呼ばれる消化 酵素によって切断され、細かい断片になります。これはさらに小腸で、膵臓から分泌されたトリプシンやキモトリプシンなどの消化酵素によってさらに細かく分解され、最終的にはタンパク質の構成要素であるペプチド(アミノ酸がいくつか結合したもの)やアミノ酸(→Q1)になって吸収されます。
 遺伝子組換え食品の安全性審査においては、タンパク質の人工胃液・腸液による消化の程度、加熱処理に対する感受性、予想される摂取量などのデータに基づ き、タンパク質が体内で有害な影響を与えないことを確認していますので、安全性審査が終了した遺伝子組換え食品であれば問題はありません。

Q28. 遺伝子組換えトウモロコシ・大豆そのものではなく、コーンフレークや油などの加工食品の安全性はどのように確認されているのですか。
 コーンフレークや油などの加工食品の場合、原料であるトウモロコシや大豆そのものの安全性を厚生省が審査しているので、加工食品であっても安全性に問題はありません。
 もちろん、加工食品を作る過程についても、食品衛生法によって必要な部分は規制を行っており、遺伝子組換え食品の安全性審査とは別に、食品加工の段階や流通段階においても安全性を確保しています。

Q29. 遺伝子組換え技術でつくったキモシンを用いたチーズは、遺伝子組換え農作物と同じように申請され認可された製品なのですか。またすでに市場に出回っているのですか。
 
 遺伝子組換え技術で作ったキモシンを用いたチーズは、厚生省で安全性の審査が終了し、1994年9月に欧米から輸入されて日本で販売されています。
 チーズは牛乳が固まることによって作られます。これは牛乳に含まれるタンパク質が酵素によって分解されることによっておきます。この原理はタンパク質が体内で分解される時とまったく同じです(→Q27)。チーズを作るのに最も適した酵素は仔牛から取れるキモシンと呼ばれる酵素なので、チーズの工業生産にはキモシンを大量かつ効率的に得ることが不可欠です。
 キモシンは、元来、仔牛の胃粘膜に存在する酵素ですが、一頭からとれる量はごくわずかなので、仔牛からキモシンを得る場合には、たくさんの仔牛の胃袋と複 雑な精製工程が必要となります。そこで、これらの酵素を作り出す遺伝子を微生 物に挿入し、この微生物(組換え体)を培養することで、簡便かつ効率的に大量のキモシンを得ることができるようになります。培養後の精製工程において組換え体 そのものは除去されますので、最終的な製品(酵素)の中に組換え体そのものは含まれません。
 キモシン以外にも、遺伝子組換え技術を応用して組換え体そのものを食べない食品添加物が作られています(→Q18)。これらもキモシンと同様に安全性審査が終了し、食品添加物として利用されています。

参考資料:
遺伝子組換え食品Q&A (厚生省生活衛生局)



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